最近、「アベノミクス効果で景気が上向いている」と言われます。その際、各種の指数が用いられます。この景気動向指数は、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、 景気の現状把握及び将来を予測するために作成された指標です。 景気動向については、景気に対し先行して動く先行指数、ほぼ一致して動く一致指数、遅れて動く遅行指数の3本の指数があります。
先行指数は実際の景気の浮き沈みに先んじて上下するもので、新規求人数・新設住宅着工床面積・東証株価指数などがあり、一般的に、一致指数に数ヶ月先行することから、景気の動きを予測する目的で利用されます。
一致指数は景気の動きと同時に動くもので、鉱工業生産指数や有効求人倍率などから算出され、景気とほぼ同じタイミングで変化すると考えらています。
遅行指数は、実際の景気の浮き沈みの後を追って上下するもので、法人税収入・常用雇用指数・家計消費支出など一般的に、一致指数に数ヶ月から半年程度遅行することから、事後的な確認に用いられています。
医療機関においては、こうした景気指標が直接すぐに経営に影響を及ぼすことはあまりありません。しかし、毎年、厚生労働省から発表される厚生労働白書の資料編では、人口構造、平均寿命、世帯構成、社会保障関係費、社会保障給付費、社会保障の給付と負担、国民負担率等の各種指標が掲載されており、そして本文では現状における課題への対応が記載されています。その内容は、将来の医療提供サービスに何が求められているのかを知る際の大変有益な資料になります。
厚生労働省は、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進しており、平成26年度診療報酬改定の基本方針でも、「今後の更なる高齢化の進展により、医療ニーズが慢性疾患を中心とするものに変化しながら増大し、医療の内容が変わっていく。その中で引き続き国民が安全で質の高い医療を受けられるようにするためには、国民の理解を得て、医療提供体制の再構築に取り組み、 団塊の世代が75歳以上となる2025(平成37)年に向けて、急性期から回復期、慢性期、在宅医療まで、患者が状態に合った適切な医療を受けることができるよう、医療機関の機能分化・強化と連携を進め、病床の役割を明確化した上で機能に応じた充実を行うとともに、急性期を脱した患者の受け皿となる病床、主治医機能、在宅医療等を充実していかなければならない」との見解を示しています。
そのような環境下で従来通りの運営で経営は継続できるのでしょうか?
図1のとおり、医師数は毎年増加しています。大学の医学部は近年、その定員を増やしており、今後医師の数は益々増えるものと予測されます。
また図2のとおり、人口構造は急速に大きく変化しており、国民の医療に対するニーズも当然変わってくることが予想されます。
- ①今、その地域において自院はどういうポジションにいてるのか、役割はなにか。
- ②地域から何を期待されているのか又、求められているのか。
- ③自院が出来ることは何か、何をしたいのか。
を自問し、自らの進むべき道を早急に決めなければいけない時期が来ています。
戦後の医療業界は人口の増加と高度経済成長、そして医師不足いう成長要因に支えられ発展してきました。その過程で、国民皆保険や老人医療費無料化といった制度が導入され、さらに経済規模の拡大に伴い診療報酬増額改定という、いわば外的な要因で発展してきました。しかし、今日環境は大きく変わり、日本の発展を支えた人口は減少時代に入り、過去のような経済成長は望めません。 平成25年度の厚生労働白書の中に「国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現」について記載があり、その中で「医療提供体制の機能強化」、「安定的で持続可能な医療保険制度の実現」、「地域包括ケアシステムの構築と安心で質の高い介護保険制度」について書かれています。 官公庁から色々な形で提供される指標や指数は、将来の方向性を示す資料として私たち国民に分かりやすい形で提供されています。今後の方向性を決める材料として、各種の指標に関心を持つとともに、こうした情報を取捨選択して積極的に活用して行きたいものです。
【図1】
【図2】