相続税対策・事業継承対策には準備期間がとても大切です。
これまで仲の良かった兄弟が、親の死後、遺産相続が原因で訴訟問題に発展してしまうケースも多々あります。早めの相続・事業承継対策が、相続トラブル防止のカギです。
相続トラブル予防のためにも相続税対策・事業承継対策・遺産分割のプランニングを始めましょう。
なぜ相続・事業継承対策は早い方がいいのか?
相続対策・事業承継対策については、いくつかポイントがあります。しかし、なにより大切なのは、そういう不安がある場合には、すぐ対策を始めることが重要です。なぜなら、相続対策・事業承継対策は早いに越したことはないからです。早めの相続対策・事業承継対策によるメリット・デメリットは以下のようなものが挙げられます。
メリット | デメリット |
(1)贈与によるメリット | (1)物価変動(下げ相場) |
(2)資金調達のメリット | (2)法改正 |
(3)物価変動(上げ相場) |
相続・贈与について
相続税とは、被相続人(亡くなった人)の死亡により、被相続人の親族等が相続又は遺贈で取得する財産に対して課税される税金です(ただし基礎控除に満たない遺産の場合には相続税は発生せず、申告する必要はありません)。
相続税は、被相続人の財産から債務、葬式費用、基礎控除を除いた額に対して課税され、計算自体は複雑ではありません。しかしながら財産、債務の定義、評価額、基礎控除の算定、死亡3年以内の贈与の取扱、未成年者等の控除など、計算の過程において高度な専門知識が必要です。
なお、遺産相続に際し、財産より借金のほうが多い場合には、相続を放棄することも可能です。この場合、相続の開始があったことを知った時(通常は死亡日)から3ヶ月以内に申し立てをしなければなりません。また、相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った時(通常は死亡日)の翌日から10ヶ月以内に提出し、納税する必要があります。そのほか、遺産の配分について、遺族間での話し合いが長期化する可能性もありますので、相続が発生すると分かった段階で早期に税理士に相談・依頼することをお勧めします。
一方、自分が亡くなることにより、遺族に相続税が発生することが予想される方は、自分に万一のことがあった場合に遺族に迷惑をかけることのないよう、相続税対策をされることは重要です。まずは、相続税の試算をするとよいでしょう。
相続税対策3つの方法
- 相続税対策としては主に以下の3つの方法があります。
- 1. 財産の減少
- 2. 債務の増加
- 3. 基礎控除の増加
このうち最も効果が大きいのは 1. 財産の減少です。と言っても、散財するのではなく、相続税の計算における財産の減少を図るのです。その方法としては、贈与、売買などにより生前に資産そのものを減少させることが考えられます。売買による現金化は、納税資金の確保としての効果もあります。
また、財産を保有するにしても、相続税評価の上でより有利な財産に変える方法もあります。たとえば現金よりも不動産で持つ、更地よりも貸家を建築するといったことなどですが、このためには相続税評価に関する知識が必要です。
現金の生前贈与は、基礎控除の活用などにより、贈与税が発生したとしても相続税より税負担が軽くなることもあり相続税対策として効果的です。しかしながら、名義や贈与後の資産の管理状況により、贈与したとみなされないこともあるため、どのように行えば贈与が成立するか税理士と相談したほうがよいでしょう。
上記の対策は一朝一夕にできるものではなく、長期的な計画が必要です。特に短期的な税務対策は問題の発生につながりやすく、最低でも3年以上は必要です。相続にしても、贈与にしても早めの対策が肝要です。
相続対策業務フローについて
相続対策は次に示す段階を踏んで行われます。
相続対策の各段階の内容については、それぞれ次のようになっています。
- 1.相続財産・税額の把握
- 相続対策の第1歩として、現在所有する資産を把握し、将来発生しうる相続税額を試算します。なぜなら財産・税額の把握をしておかないとゴールが見えないからです。 財産・税額の把握をした後、具体的対策の検討を行い、予測相続税額に基づいて、相続税支払いの原資となる現金(資産)の留保すべき金額(ゴール)を設定します。
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- 2.具体的な対策の検討
- (1)資産運用計画
- 現在所有する資産の状況から、不動産管理会社等設立、資金借入、資産売却、資産構成の見直し等の様々な手法を検討し、最適な資産活用計画を策定し、所有資産の有効活用を図ります。また、相続までの期間(=準備期間)等を予測し、その準備期間内で、納税資金となる現金留保額が最大となるよう、資産の有効活用策を検討します。
- (2)保険の利用
- 保険金を年金で受け取るものは相続税法上の財産評価が下がる(=相続税額が低くなる) 場合がありますので、所有資金に応じて保険の利用を検討します。
- (3)各種規定の活用検討
- 生前贈与・相続税の物納・延納等、各種規定の実行が必要かどうか検討し、最適なプランを策定します。
- (4)争続の回避
- 相続争いを避けるために、生前から財産の帰属を推定相続人に対して伝え、必要であれば遺言状を作成しておきます。
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- 3.資金繰り計画
- 上記計画に基づき、相続開始予定時期までに留保可能な現預金額を算定します。資金繰り計画において資金の借入等が必要となる場合には、返済計画案も策定します。
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- 4.計画の実行
- 策定した計画に基づき、具体的な行動を起こします。
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- 5.維持・管理
- 当計画の実行により生ずる、不動産管理会社等の運営、賃貸物件管理等の業務を維持・管理し、計画達成度・状況変化を定期的にチェックします。
事業承継について
最近は病医院でも後継者問題が深刻になってきています。子供が医師でない、医師にはなったが後を継ぎたがらない、このような場合、将来的には廃院するのか、それとも第三者に承継するのか考えておかなければなりません。個人なのか医療法人なのかによっても承継の方法は異なってきますし、遠い将来の話と思わずに事前の取り組みを十分行うことが重要です。
事業承継はなぜ難しいか?それは本音で話し合えないテーマだからです。理屈は分かっていても、事業承継をいざ行動に移すとなると、まだ元気で診療もできるからもう少し先でいいのではないかと、どうしても先延ばしになる傾向があります。しかし、子供への承継、子供以外の第三者承継でも、先代の院長先生が元気で来院患者数が充分にあるうちに、少しずつ後継者にバトンを渡していくことが成功する事業承継の大きなポイントになります。
事業承継のポイント
まずは経営者自身が次のポイントを考慮しておくことが大切です。
あなたの事業は全てを継承するのですか、一部は売却・収束させるのですか?あなたの後継者は誰ですか?いつ事業継承を行うのですか?あなたは後継者と事業継承に関してしっかりと話し合っていますか? 後継者にするための教育は進んでいますか?
事業承継は顧問税理士に相談するだけで進められるようなテーマではありません。事前準備の取組を行うほど成功する確率が高くなるといわれています。綿密な計画と着実な実行を心掛けましょう。M&Aは大企業だけの手法ではありません。廃業、後継者不在で悩む前に一度お考え下さい。
事務所からのアドバイス
私共事務所では、これまでに培ってきたノウハウを活かし、先生方に事業承継につきまして、具体的なサポートをさせていただきます。相続・事業承継について、お困りの方、またこれから考えてみようと思われたら、是非一度、私共事務所にご相談下さい。